全体史に傾くという記述のあと、個別具体性への関心が生まれる部分が、よく分かりません。

アナールの全体史は、個別具体性を蔑ろにしないものです。申し合わせがあったわけではありませんが、彼らの主張においては、常にミクロ/マクロの往還が意識されていました。集合性と個人性はともに独自のもので、お互いに相関関係を持ちつつも、個人性は集合性に総合されず、集合性は個人性に還元されない。ゆえに全体史は、両者を意識しつつその関係を問うものになってゆく。いずれにしろ、個々の具体性が突き詰められなければ判明しないもの、それがアナール的全体史であったといえるでしょう。