埋甕の絵は、母の胎内に戻るより、むしろ流産のようにみえます。無事に埋めなかったことを戒めているのではないか、という学説はありますか?

「子供を産めなかったことを、女性に戒める」という発想は、極めて家父長制的なものの考え方です。男性優位であり、女性を、それこそ生む機械としかみていません。縄文時代には、当然家父長制的家族など存在しませんし、例えば、男性=強力・厳格・権威的、女性=柔軟・優しさ・慈愛といった、父性/母性カテゴリーは、すべて未成立であったと考えられています。男女を表象する造型に、生殖器をはじめとする身体的部位以外、男女差を区別する形象が一切見出せないためです。出産は決して男性にはできない、生命を産出する偉大な行為であり、畏怖をもって認識されても、決して男性による支配を受けるようなものではなかったのです。