2010-06-01から1ヶ月間の記事一覧

林業を否定するなら、天台宗では寺院も建設できないのではないでしょうか。 / 例えば薬草を薬に使ったとしても、殺生の罪業になるのでしょうか。 / 黒縄地獄幅の道具をみると、杣ばかりか大工や番匠まで卑しい存在とされていたようです。律令制下でも建築官司はあるわけですし、後の職業観を考えてみてもそうは断言できないように思うのですが…。

宗教というのは都合よくできていますので、樹木の殺害を罪業と捉えつつも、寺院建設を許容する仕組みはきちんと出来ています。これについては中国から、山神が進んで樹木を造寺のために提供したり、樹木が自から建設の場に集合したりする説話が残っています…

天台宗で草木発心修行成仏論が生まれたのはなぜでしょうか。

なぜ天台なのか…ということは、まだはっきり説明できていません。個人的には、比叡山周辺での樹木伐採に原因するのではないかと考えています。平安京を維持するための伐木は、周辺の山々にかなりの負担をかけていました。桂川や賀茂川は頻繁に洪水を引き起こ…

草木発心修行成仏論とは、草木が人間と同じ地位にあるということになるのでしょうか。

そうですね。華厳宗や天台宗では、主体である自分自身と客体である環境世界は相即不二の関係にあると考えるため、一方が悟りを開いて成仏すればもう一方も仏になる、一方の仏教の理法が作用しているなら、もう一方にも同じように仏が遍満しているということ…

太初暦について。律管の容積で作られた81という分母は、実際には不正確な数値だったのではないでしょうか。西洋では早くから天空を重視し観測していたはずですが、東洋はより身近なものへ関心を向けたということでしょうか。

現在の1ヶ月は29.53059日ですが、太初暦は29.53086日、その前に使用していた四分暦では29.53085日でした。四分暦の方がやや現在値に近いので太初暦の方が誤差は大きくなりますが、もちろん運用に支障をきたすほど不正確であったというわけではありません(…

あたかも兵書を読みさえすれば仙術の力が手に入れられる、といった考えが歴史が下るほど強くなるように思います。修行などの描写が減ってゆくことには、やはり宗教が深く関わっているのでしょうか。

とくに太公望に仮託された『六韜』、その系統の『三略』に関しては、太公望や張良自身が神仙に擬されることの多いこともあって、次第にマジカル・アイテムのような位置づけになってゆきます。すなわち、もはや内容を読まなくとも持っているだけで特殊な力が…

武田信玄の「風林火山」も『孫子』の影響ですよね。

日本の兵書受容は『孫子』が中心、というのが一般的理解ですが、実はどうもそうではないようです。古代から江戸期までの兵書写本・刊本を調査すると、圧倒的に多いのは太公望に仮託された『六韜』、その系統に属する『三略』で、『孫子』が重視されてくるの…

兵陰陽の話は面白いですが、現実には役に立たないのではないでしょうか。役に立ったという話はあるのですか?

陰陽・五行説は世界を説明する科学の基本中の基本でしたので、あらゆるものが五行によって説明できると考えられていました。もちろん、すでに戦国時代末期から批判もありましたが、一般には長く価値を保っていました。恐らく兵陰陽の論理で勝利すればよし、…

中国の「黄巾」「赤眉」の乱も五行と関連しているのですか。

もちろんそうです。黄巾の乱については「蒼天已に死す、黄天まさに立つべし」というスローガンが有名ですが、一般には、火徳(前漢末の劉向により提唱)の後漢王朝に代わり土徳の太平道が天命を受けるという発想と考えられています。しかし、蒼天を後漢のこ…

陰陽五行説について詳しく知りたいのですが、お薦めの本はありますか。 / 兵陰陽でレポートを書きたいのですが、どんな本を読めばいいですか。

陰陽五行説については、専門的な難しい本、そしていい加減なアヤシイ本がたくさんあるかと思いますが、日本の陰陽道の成立も学べて便利なのが下の2冊です。著者は2人とも陰陽道の専門家なので、内容にも信頼が置けます。陰陽道 呪術と鬼神の世界 (講談社選…

中国でのトーテミズム研究の現状を教えてください。

とにかく少数民族の文化に多くの事例が残っているので、研究自体は大変に盛んです。しかし個人的に気になっているのは、講義でもお話ししましたが、やはり想像上の動物を始祖とする信仰をトーテムとみなせるか、という点です。確かに始祖として崇めていた動…

大本教の教祖母子の関係は、邪馬台国の卑弥呼と弟王との関係に似ていると思うのですが。また、これらの新興宗教は現在のスピリチュアル・ブーム(『オーラの泉』など)とは何が違うのでしょう。

女性が神霊を憑依させて託宣を下すシャーマンとなり、男性がその神語りを通訳する「審神者」の役割を果たすというのが、アジアのみならず汎世界的に存在する宗教者の一形態です。大本教や天理教の場合も同じ形式を採っていますし、近世以前の民衆宗教の形態…

『山海経』で描かれている周辺世界には鳳凰らしきものもいるようですが、それは周辺を必ずしも野蛮視せず、信仰の対象ともしていたということでしょうか?

確かに、龍や鳳凰などは神的な動物とされていながら、中原からみた周辺世界に住むとされていました。しかしそれは、人里離れた深山幽谷の清浄な地に住むという意味で、周辺世界の差別化とは少々別レベルの意味づけだったのでしょう。ただし、前近代の分類と…

『遠野物語』で、行方不明となった女性の葬式をするとき、なぜ枕が形代とされたのでしょうか。

人間は睡眠中に夢をみますが、古代中国などでは、枕のなかに異界が開けている、枕が異界への入り口であるとの認識もあったようです。とりあえず、近現代的な認識を超えた「境界的存在」ではあったようですね。また、人間の霊魂は頭に宿ると考えられていまし…

毛衣が、なぜ羽衣に変わってしまうのか気になりました。

この変化には、恐らく仏教の天界のイメージや、神仙思想や道教の仙界のイメージが関わってくると思われます。そこでは、天人や天女、仙人や仙女たちが、軽やかな衣を纏って天空を飛び交っているわけです。とくに神仙境については、漢代以降に具体化され、六…

『捜神記』の山人が、女を攫って子供を産ませるのに、それを返してしまうのは何故なのでしょう。

これも憶測に過ぎませんが、モデルとなった少数民族の母系社会を反映しているのだ、とみることもできます。生まれた子供は母方の家で養育させる、という発想ですね。この猳国がいかなる実態を持つのかは不明ですが、外婚のみでなく内婚もあったのだと考えれ…