西方浄土という考え方があるとのことでしたが、『西遊記』で西を目指すのは、天竺が西にあるというだけでなく、西方に聖域があるとの考え方も関係しているのでしょうか?

阿弥陀西方浄土の思想は広く普及したものですので、小説『西遊記』の段階では、ユートピアとしての天竺に西方浄土が重ね合わされていたことは間違いないでしょう。ただし、実在の玄奘においては、すでに様々に現実的な西方情報が将来されていた時期ですので、ユートピアであるという認識は希薄だったでしょう。ちなみに仏教の浄土は西方だけにではなく、東西南北上下の世界に遍在します。例えば東方は瑠璃光浄土で、「医王」とも称される薬師如来が主宰しています。