仏塔は、五重塔、七重塔など、奇数であると高校で習いましたが、なぜでしょうか。

これは案外に難しい問題です。仏教では、とくに奇数を重視するという考えはありません。しかし、8を悟りを表す聖数として意識します。そうして聖数であるがためにあえて表示せず(例えば、日本古代に天皇の姿を御簾で隠すのと同じ発想です)、あえて8を明確には表さず、その直前の7で代用するという方法が採られます。例えば、末法の世界に再び救済をもたらす弥勒の降臨は、56億7千万年後ですが、これは弥勒の成仏を8と捉え、5→6→7という形で8への接近を表現したものです。七重塔なども、こうした表現のひとつであると理解できます。一方中国においては、古く殷帝国の頃より3を神聖な数として意識し、後天・地・人を表象するものとして意味づけされてゆきます。また、易の概念では奇数は陽数であり、天を象徴するものであって、とくに9がその最大の数であると位置づけられています。恐らくはこのような観念の複合から、神聖なる7に隣接する陽数として、3や5、9などが選択され、とくに天へ伸びてゆく建築である塔の〈理屈〉として構築されていったのでしょう。