心理学者のピアジェは、アニミズムを幼児の心理的特徴と捉え、これは年齢を重ねるに従って、消えてゆくと指摘していました。心理学では発達の特徴を表す用語・概念が、史学では神話・文化を示していることが興味深いです。
そうですね、重要な指摘をありがとうございます。実は、指摘してくださった2つは、別々の概念ではないんですよ。原始的宗教状態としてのアニミズムは、イギリスの文化人類学者タイラーが、『原始文化』(1871年)のなかで概念化したものです。これは、宗教を進歩史観的に捉えるものであり、アニミズムは社会・文化の発達のなかで、別の宗教形態に変質してゆくと考えられていました。ジャン・ピアジェの発達心理学におけるアニミズムは、このタイラーのアニミズムを援用したものなのです。ゆえに両者とも、一方は宗教、一方は児童心理であるものの、進歩・発達の枠組みの最初期段階に、このアニミズムを設定しているわけです。ちなみに、現在の宗教学や人類学におけるアニミズム論は、この進歩史観から解き放たれ、より基底的な宗教形態として、種々の創唱宗教のなかや現代社会においても息づいている、その状態は必ずしも未開・未熟とはいえない、と考えられるようになっています。