なぜ渡来人はあれだけ受け容れられ重宝されたのに、蝦夷は敵視されたのでしょう。この差別の理由は、単に先進的知識・技術の有無にあったのでしょうか。 / なぜ朝鮮諸国を服属国とみなす必要があるのか分かりません。

これは、古代国家が依拠した中華思想に拠るものです。中華とはそもそも文化の中心、秩序の核を意味しますが、中国王朝の世界観においては、その周囲には文化の行き渡らない野蛮な異民族が存在しました。いわく、北は北狄、東は東夷、南は南蛮、西は西戎。これらを教化して中華と一体化してゆくのが、天子の本来的な目的とされたのですが、いいかえると、夷狄の存在こそが文化の中心を明示するということになります。こうした考え方は、中国王朝と比肩する国家を目指して朝鮮諸国や日本にも輸入されました。日本は中国王朝のように実際に異民族を持たなかったので、関東以北の抵抗勢力を東夷として差別化したわけです。『書紀』斉明天皇五年(659)七月戊寅条に引く「伊吉博徳書」に拠れば、内属してきた蝦夷が唐皇帝に献上され、風俗等について未開を強調した差別的な説明をされています。唐に対し、倭の中華たることを標榜するために贈られたのでしょう。ちなみに、蝦夷の「蝦」は毛の長いことを意味し、やはり野蛮であることを含んだ表現となっています。