赤色は魔除けの機能を持っていたそうですが、古墳石室内への施朱以外にはどんな例がありますか。神社の鳥居が朱色なのも、関係がありますか。

そのとおり。神社の鳥居、寺院の欄干、地蔵の前掛けなどなど、歴史・考古・民俗のなかに、さまざまな事例を見出すことができますね。講義でも少し触れましたが、赤色顔料の成分は、酸化鉄系のベンガラ(いわゆる朱。弁柄。インドのベンガル地方の原産なのでこう呼称されるという)、硫化水銀系の辰砂(いわゆる丹。中国の辰州原産)に2分されます。いずれも、石器時代より破邪の顔料として用いられ、墳墓などには濃厚な施朱がみられます。古墳時代には、石室内部をすべて赤色顔料で塗装した装飾古墳も出現します。硫化水銀系の辰沙は、中国では神仙思想と結びつき、不老不死の妙薬とも信じられていました(実際は相当な毒であったわけですが…)。赤は太陽の色、血の色であり、やはり生命力の象徴とみなされたのでしょう。