原典講読(10秋)
これについては、次回以降の講義で詳しくお話をしてゆきます。
まだしっかり予定を立てていません。ただし、『伴大納言絵巻』を用いて紹介した事柄が、まったく試験に出ないということはないでしょう。
何者かによって放火されたのだとすれば、その放火という行為、あるいはその焼失という現象自体に、古代的な意味が付与された可能性はあります。中世史の特講をお願いしている中澤克昭先生にも、「自焼没落とその後―住宅焼却と竹木切払」(『中世の武力と城郭…
楼閣建築の門には、仰るとおり、索敵や防備のための「櫓」としての機能があります。ただし、常に戦乱のなかにあった中国の都城に比べ、日本の宮城は権力の荘厳、権威の誇示により力点が置かれていたものと思われます。奈文研の清水重敦さんの単層説はまだ論…
朔平門には、兵衛の詰所としての北の陣があるということです。殷富門の南にある右兵衛府は役所の建物なので、単なる詰所ではなく、機関としての兵衛府を運営するための事務機構なども置かれています。
検非違使の容姿については、特別な着物、甲冑等を着けていたということはありませんが、二条良基『百寮訓要抄』、北畠親房『職原抄』などの書物によると、容儀や富貴のことが別当の条件であったようです。この「容儀」の問題については、丹生谷哲一氏が、断…
これからみてゆくなかには、異時同図法や逆勝手、すやり霞も使われていますが、確かに『信貴山』ほど劇的・効果的な使われ方ではないかも知れません。題材にもよるのでしょうが、『伴大納言』は絵でみせる絵巻、『信貴山』は構成でみせる絵巻といっても過言…
道具はもちろん筆ですが、顔料は白色のものを使用しました。日本画の手法としては、「胡粉」を用いるのが一般的です。貝殻を用いた白色顔料で、加工もしやすく、使いやすかったのでしょう。下書を「粉本」と呼ぶ語源でもあります。「胡」は、中国からみて西…
とにかく神聖性を表す記号なんですね。例えば英雄や構想が誕生する際に、屋敷の上に五色の雲や紫雲がたなびく、という逸話は枚挙に遑がないほどみられます。
夢に政治性が表れる、夢が後の知識や利害関係によって表現しなおされる、という問題は確かにあります。しかし『蜻蛉日記』の場合、夢は最終的に出家をしてゆくまでの道標なので、宗教的な観点からある程度真実味をもって表現されているとみていいでしょう。…
夢に神意をみる伝統は、東アジアの歴史資料では殷代の甲骨卜辞から確認できる、極めて古いものです。周代には天意を確認し王にサジェスチョンを与える占夢の官も存在し、戦国時代に至るまで活躍しています。秦漢前後から政治的価値は弱まりますが、道教では…
大仏と一対一の関係で繋がれるため、参籠は独りで行ったとするのが内的な解釈でしょう。物語の展開から考えると、参籠以降の場面は大仏対尼公、命蓮対尼公の構図で描いた方が間違いなく効果的で、そこへ従者が入ってくると読者の注意力が散漫になってしまう…
いやあ、これはどうなんでしょうかね。確かにぼくも疑問に思っていたのですが、動きを示す技法なのか、彩色が禿げてしまったのか…。恐らくは前者だろうと思います。大仏殿の悠久性・不動性を前提に考えると、ちょこちょこと動く尼公が描線のみで表現されてい…
これは解釈が難しく、また面白い場面です。陰・陽の石からなる道祖神が、それぞれ尼公と翁の傍らに配され、性の問題を暗示していることは間違いないでしょう。それと柳との関係ですが、祠があること、老木であること、立っている場所が衢(交差点。古代の代…
内容は前回お話ししたとおりです。時間は60分、持ち込みは、自筆のノートのみ認めます。講義で配布したプリントは持ち込み禁止。基礎的事項の確認ですので、あまり力まず落ち着いて取り組んでください。
これは、東大寺からみて信貴山が南西にあったことに拠ります。南西であること自体に特別な意味づけ(例えば陰陽道的な裏鬼門など)はないと思われます。
飛倉の切れ端については、まったくないとはいいきれませんが、樹木信仰のみを強調して語ることはできないでしょう。神聖さの起源が樹霊にあるのではなく、それが命蓮の奇跡譚に連なるという彼の法力にあるからです。恐らく倉が石造であっても、また粘土造で…
やはり説得的な物語を生み出すためには、プロデューサー・演出家としての審神者が重要でしょう。彼がいなければトランスも意味をなしませんし、憑坐はただの変人、もしくは病者として社会から排除されてしまいます。しかし、憑坐のトランスが真実味を持たな…
奈良時代以降、民間に多くのシャーマンがあり、また下級の僧侶たちが活躍していたことは、それらを禁止する法令や説話集などにみることができます。駆り移しの厳密な手法が用いられていたかどうかはともかく、憑坐と審神者のユニットは通時代的・世界的な広…
作者や制作環境についても、東大寺や信貴山自体の寺院説、後白河のサロンとする貴族社会説などが並立していますので、明確には分かっていません。ただし、一般庶民に至るまでがまじまじと見つめられるような作品ではなかったことは確かでしょう。しかし、「…
講義でもいいましたが、絵巻を読むための基本的知識を問います。幾つかの技法について説明しましたので、それはちゃんと把握しておいて下さい。『信貴山縁起絵巻』の解釈論や背景説明については問いませんが、幾つかの特徴的な場面については復習しておいて…