アジア・日本史系概説I(19春)
屈葬については、大別して2つの理解の仕方があります。ひとつは、死霊が災禍なすものとして回帰することを防ぐため、もうひとつは、胎児の姿に戻すことによって再生を願ったのだというもの。いずれも、かつて文化人類学で議論となった、祖先崇拝はなぜ始ま…
殷代の熱卜については、かなりシステマチックに整備された状態で運営されたことが分かっています。まず卜占を行う貞人たちですが、やはり専門技術者集団で、卜府と仮称される機関に所属していました。そこへは牛の肩甲骨、亀甲などが支配領域の各所から届け…
移動生活者は、変化に富んだ環境のなかを水や食料を探し、危険を避けながら移動してゆくので、そもそも、定住生活者に比べ自然環境の変化、気候や地形から得られる情報に対して敏感なのです。前もって避けられる危険にはあえて近寄らない、そうした点も含め…
縄文時代の土偶は、草創期から晩期までの1万年ほどにわたって、本当に多様な形状、大きさのものが発見されています。それゆえにその機能、役割についても、一括りに定義するのではなく、時代・地域による多様性を認めたほうがよい、という見解が最近強くな…
難しいですねえ。これは想像でしかありませんが、やはり落葉広葉樹林や照葉樹林のなかで、動物たちが堅果類を食べているのを目撃したのが、主な契機でしょう。しかし、生の状態で食べるのは堅いし、美味しくないし、消化できずに腹を壊してしまう場合もある…
ひとつ考えておかねばならないことは、現代社会が本当に定住社会なのか、定住社会とはそもそもどのような状態をいうのか、ということです。これは、考古学者・人類学者の西田正規さんが指摘していることなのですが、よくよく考えてみると、現代もよほど流動…
縄文時代の紋様のうち、押型文、貝殻沈線文、条痕文などの紋様は、まずは一般的な意味でのデザインとして考えておくべきでしょう。何からの意味はあったのかもしれませんが、いまそれを一概に想定することはできません。しかし中期の極めて立体的な造型の土…
縄文土器に匹敵する土器は、同時代の世界のどこにも存在しないので、確かに画期だということはできるでしょう。それ以降の弥生土器、須恵器、土師器など、列島的な陶器文化の起源をなす、という点においても重要です。また、縄文土器が青銅器や鉄器と異なる…
例えば、福岡市博多区の板付遺跡(縄文晩期〜弥生早期)からは、縄文時代の突帯文土器(夜臼式土器)と、朝鮮系の無文土器、この両方の特徴を持った土器=板付式土器(突帯文と無文の表面を持つ)が出土しています。すなわち、同遺跡にあった集落では、朝鮮…
ぼくも気になるところですが、大雑把にどうこう考えるより、個別に検討してゆくしかないでしょうねえ。ひとついえるのは、生死や身体に関わるような、われわれがそれほど急激に変化しない、場合によっては何百年、何千年もあまり変わらないと考えている心性…
うーん、難しいですねえ、いい質問です。いま、手許に環状集落、墓地出土の遺骨に関する、性別が分かるデータがないのですが、〈祖先〉として扱われるものに性別の偏差があるかどうかは、確かに考えてみる必要はありますね。ただし、縄文時代の文化的象徴を…
優しい意見ですね。ひとつ誤解があるかもしれないと思うのは、非難と批判とは異なる、という点です。非難には「咎める」といったニュアンスがあり、相手の人間としてのあり方も含め、「正す」という行為になります。場合によっては、人格否定を含むこともあ…
近代日本の毛皮養殖については、近世までに北方地域で行われていた毛皮交易の歴史を踏まえて行われています。日本は中世辺りから本格的に参入してゆきますが、古来、中国王朝とその北方周辺地域で珍重された毛皮は、最高級のものがクロテン、そしてギンギツ…
歴史学や民俗学、民族学(文化人類学)は、それぞれ対象や方法論、学問的伝統が異なりますので、隣接する分野ではありますが同じ学問とはされていません。歴史学が、文字で書かれた記録=史料を素材として過去の事実を追究してゆくのに対し、民俗学は、口頭…
武家政権の力が強くなってゆくと、朝廷の権限であった改元も、幕府側、もしくは武家の主導者の要請によって行われることが多くなってゆきました。江戸幕府に至ると、「禁中並公家諸法度」によって、朝廷は元号の考案は行うものの、施行の権限は幕府に掌握さ…
盛岡の毛皮獣養殖所については、もともと農林省や軍部の後ろ盾があって運営されていた施設でしたが、戦後毛皮獣の需要がほぼなくなってしまったこと、帝国の諸機関が解体されて運営の基礎が消滅してしまったことから、なし崩し的に廃絶に至ったと考えられま…
これについては、少し誤解があるかと思います。授業では、旅人による隼人の反乱の鎮圧の問題を指摘しましたが、それは彼自身が、人間として残虐であったということを意味しません。大伴氏は、氏族として王権の直轄の武力であり、時代が氏族制から律令制に移…
今回の毛皮獣の件は、いってみれば偶然がもたらしたものでした。少数民族政策の勉強のためにロシアへ留学していた元教え子から、「こういう話があるんですよ」と教えて貰ったのです。ロシアでは現在でも、必ずしも毛皮をとるためではなく、キツネをペットと…