2014-05-01から1ヶ月間の記事一覧
男女の性愛を比定するようなベクトルは、神話のなかでも後世的なもの、国家が国民のアイデンティティーを維持・強化すべく作り上げた段階の神話や、倫理や道徳が意図的に盛り込まれた芸能・芸術段階の神話などにみられます。授業でお話ししたオイディプスな…
我々の意識や心理が社会的なものである以上は、記憶の想起も常に社会的にならざるをえません。ふとした昔の個人的体験の想起も、まずなぜその想起の機会が与えられたのか、その機会になぜその記憶が結びつけられたのか考えてみると、現在の自分が置かれてい…
ヨガはサンスクリット語のYoga、漢語では「瑜伽」と書きます。原義は「結びつけること」、自己と世界、法、超越者との合一を図る瞑想行で、仏教に至って大きく発展しました。広義においては、日本でいう坐禅に相当します。中国に仏教が伝来した3〜5世紀頃…
武術の身体として鍛錬されたものとしては、そのような説明の仕方になるでしょう。しかし、実際には刀を使用しない農民、町民らも同じような歩き方をしているので、全般的な説明にはなりえません。一般的にナンバ歩きやナンバ走りは、西洋的な歩行・走行と比…
とくに実験のために撮影された映像ではなく、撮影された時期や地域、その動機などもさまざまに異なるフィルムです。それゆえに、かえって非西洋的歩き方の普遍性が浮き彫りになっているわけです。
現在に繋がるような男女差別が現れるのは、家父長制に基づく男性優位の社会が確立して以降です。いわゆる神憑りてきな役割を多く女性や子供が担うようになるのは、文化・政治を成人男性が象徴し、自然・宗教を女性が象徴するという二元的枠組みが構築された…
現代社会で日常生活を営む私たちには信じがたいことかもしれませんが、現在も神の声を聞くシャーマンは存在します。彼らは原因不明の病などに罹り、医療では克服できないそれに苦しみ悩み抜いた末に、先輩のシャーマンのもとを訪れ修行の末に克服し、自分自…
穂落神とは異なるレベルの伝承ですが、始祖が開拓神として活躍する物語は伝承されています。もちろんずいぶん時代が下って7〜8世紀の物語ですが、現在の茨城県あたりの地誌である『常陸国風土記』の行方郡条には、箭括麻多智なる人物が、夜刀神という蛇神…
奈良公園の鹿は、春日大社の神の使いとして保護されています。神聖視が始まるのは古代〜中世で、弥生時代の認識が継続しているともいえますが、その時点で稲作と強固に結びついているわけではありません。『日本書紀』などでは、神の使いとして鹿や猪が登場…
当時どのような狩猟が行われていたかは不明な点が多いのですが、現在の狩猟採集文化では、メスや子供の獲物を必要以上に狩猟してはならない、とする禁忌が伝えられた地域もあります。例えば、北アメリカのトリンギット・インディアンには、主人公の狩人が精…
弥生の土器絵画には、サメのようなもの、シャチのようなものが描かれています。二種とも生みにおいては特徴的な生き物で、神話や伝承にも「動物の主」として登場します。弥生時代にも、縄文の狩猟採集文化を継承・発展させた海辺の集落があったはずで、それ…
確かに、あまり深い意味を求めるのも穿ちすぎというところはありますね。しかし、屈葬のように出土例が多く、地域的・時間的限定されているとしても一定の習俗として認められるものには、必ず何らかの意味があります。しかし、当時の人々にも無自覚、無意識…
やはり、歴史学者でもありフロイト研究者でもある、ピーター・ゲイの一連の著作をお薦めします。まずは、『歴史学と精神分析―フロイトの方法的有効性―』(岩波書店、1995年)でしょうか。個人の主観的構築物にすぎない歴史叙述が全人的価値を持ちうるのはな…
初期のフロイトは、無意識の欲動を性に基づくもの=エロスとのみ考えていましたが、後期にはその逆のベクトル、死の欲動=タナトスも存在するとの結論に至ります。第一次世界大戦から帰還した兵士たちを治療していたフロイトは、彼らの語る悪夢から、夢を無…
成長過程で誰しもが一度は経験することでしょうが、自己に対する防衛意識が過度に働いている点は否めないかもしれません。自尊心と自負が傷つけられ、自分にとっての世界や価値観が根底から崩されることを忌避するという防衛機制ですね。例えば学問の世界で…
この問題は、むしろエディプス・コンプレックスの枠組みのなかで対象化されています。つまり、異性の親との一体化を求める子供の行為は、同性の親からの去勢恐喝=虐待を呼び起こし、結果として同性の親へのアンビバレンツな感情を喚起し構築してゆくという…
細かな相違点を挙げればきりがないでしょうが、最も対照的な点は、やはりユングが無意識を集合的に捉えているのに対し、フロイトはあくまで個人心理の成長過程において把握していることでしょう。ユングは集合的無意識下にある〈元型〉が人間の心理を規定付…
異性の親への一体化欲求や同性の親への愛憎も無意識の欲動の発現ですが、この経験と克服の過程で、その性愛を抑制しようとする心理機制や罪悪感が醸成され、道徳感・倫理感の中核を形作ってゆくと考えられています。その過程においては種々の葛藤が生じ、場…