2014-04-01から1ヶ月間の記事一覧
契機が何であるのかは、明確には分かりません。しかし縄文時代は、当初は半定住、その後も流動化を繰り返していますので、移動することに対する抵抗は、その後の列島社会より弱かったと考えられます。災害などによって海辺の集落が解体し、離れた場所への移…
結局講義中にも説明してしまいましたが、考古学的な発掘で身分の上下や強力な首長の出現の指標となるのは、住居や墓の規模・様態です。一部の住居や墓の規模が、他と突出して巨大になれば、それは権力を持ったリーダーの出現を意味することになります。弥生…
各地の貝塚から鯨の骨がみつかっており、また北九州では土器の底に鯨の脊椎の跡が残っているもの(土器作りの作業台として利用した)が発見されているため、縄文の人々が鯨を捕獲し食用としていたことは明らかです。しかし、イルカなどについては、丸木舟や…
環境変動による植生の変化や、温暖化に伴うバクテリア・病原菌の活発化によるものと考えられていますが、未だ充分に明らかになっていません。例えばマンモスについては、氷河期のユーラシア北部にはその主食であるイネ科の植物が多く育成していたものの、温…
老若男女に大きな偏りはないと思われますが、平均寿命の関係からいえば、やはり現在のような高齢者は少ない集落、社会であったといえるでしょう。性別分業に関しては、基本的に男性が狩猟・漁撈全般、女性が貝なども含めての採集に従事していたとみられてい…
もちろん、食生活の変化は表れます。例えば、縄文早期の群馬県では土器が大型化し、住居外部に作られた炉穴と呼ばれる竈的な調理施設で使用されました。同時期には気候も温暖化し、周辺に多くの狩猟用落とし穴がみつかっていることから、豊かな食生活の表れ…
縄文土器は、現在世界最古の土器のひとつです。講義でもお話をしましたが、列島各地でも多様な形状、装飾性を持ちますので、出土地層や放射性炭素同位体による年代測定、同形式の土器の分布などから総合的に判断して、編年を作成・補正しつつ、さらに土器の…
もちろん、攪乱が起きる場合もありますが、その際には前後と比較して異常な情況が検出されますので、かえって災害や環境変化の重要な材料となります。例えば秋田県三の目潟の年縞からは、朝鮮半島の白頭山から届いた火山灰が検出されており、これまで不明だ…
花粉は、植物にとって生殖のための極めて重要な「機関」なので、構造は極めて強靱です。一般に水域などでは極めて保存性が高く、陸上でもバクテリアなどの侵蝕で損壊される場合があるものの、とにかく天文学的な数量で産出されますので、やはり堆積層から大…
こちらの話し方に、少し問題があったかもしれません。その集落(人口)を維持できるだけの衣食住を支給しうる環境、自然の力がないと、集落は解体し各所へ散ってゆくということです。今回お話ししたとおり、縄文時代は概して暖かく環境条件には恵まれていた…
毎日の生活実感からするとそう思うのも仕方ないかもしれませんが、例えばIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)が以前から警告・報告している計算結果によれば、年平均気温が1度上昇するだけで海水面が1〜2メートルも上昇する地域が出て、水…
やはり、青森県の三内丸山遺跡でしょう。出土遺物も豊富な大規模な村落遺跡であり、縄文前〜中期の高度な自然利用のあり方が非常によく分かります。しかし、それもあくまで時代的・地域的に限定された情報に過ぎないわけで、縄文時代の総体を理解しようと思…
縄文時代から現在に至るまでは、史資料の残存の仕方も社会のあり方も異なりますので、むしろ統一的基準で語る方が無理があります。その時代の政治・社会・生活のあり方をよく反映し、ある程度のスパンをもって検出しうるものとの視点で考えたとき、それが縄…
ジャーナリストや多くの考古学者が個人的な検証を行う一方、日本考古学協会が前・中期旧石器問題調査特別委員会を組織して綿密な調査を進め、すでに最終報告を出しています。藤村氏の捏造は、彼の携わった縄文遺跡のそれにまで及ぶことが確認されており、学…
一般的に歴史学・歴史叙述とは、断片的な事実を繋ぎ合わせ、ある時点からある時点に至る対象の変化の過程を跡づけ、その理由について考察し叙述するものです。しかし初回の講義でも扱いましたが、「歴史」とは過去そのものではなく、主体(例えば研究者)に…
スタンスと内容の双方において、そうした批判に該当する面のあることは否めません。しかし、当時の「学者」というものの社会的位置から考えて、やむをえないことでしょう。そもそも、口頭伝承に基づく「常民」の歴史を思考したこと自体、画期的です。柳田は…
9.11は対テロ戦争を将来し、世界を泥沼の戦いへ引きずり込みましたから、その後の「歴史」の展開には極めて大きな影響を与えていますね。学問の世界でいうと、一神教vs多神教という、何の根拠もないキリスト教批判、イスラム教批判を流行させてしまったのは…
そうそう、仰るとおりです。こちらの講義では、その「物語りの限界」もしっかり押さえてゆきます。講義を先取りしてしまいますので、とりあえず「乞うご期待」。
東日本大震災直後、国立国会図書館OBら紙文書の専門家によって形成された「東京文書救援隊」の考案したマニュアルへリンクを張っておきます(→こちら)。ちなみに、東北地域でも博物館の所蔵目録などはデジタル化が進んでいたのですが、CDやDVDなどの光デ…
津波による被害、原発事故による立入禁止区域の設定によって、他の場所への避難を余儀なくされ、コミュニティ自体が解体してしまうという場合があります。今回の震災は、それ以前から東北に潜在していた問題を一気に表面化、かつ深刻化させたといわれていま…
また変更することもあるかもしれませんが、現在考えているのは、授業で扱った全般をカバーするものです。とうぜん、限られた字数のなかで「満遍なく通史を叙述する」ことは不可能ですので、何らかの基準に沿って取捨選択を行い、何らかの理由をもって「重要…
教員としては、「絶対予習・復習してね」といいたいところ。2単位を得るためには、制度上は予習・復習の1時間ずつが義務づけられているのですから。予習・復習を行えば行うほど、必ず理解度は高まり知識は身につきやすくなる、それは間違いありません。し…
まず、神話や伝承、昔話などに出てくる存在をなぜ宇宙人、異星人などと捉えるのかという点が問題です。そういう類の書物は世のなかに氾濫していますが、たいてい史資料を恣意的に読解しているか、先入観を持って読んでいる。あるいは、史資料などまともに読…
『角川日本姓氏歴史人物大辞典』というシリーズが、都道府県ごとに出ています。まずは、ご両親に尋ねるなどして自分の故郷について調べ、この本を引いてみてください。故郷が分かれば、氏姓と地名が一致する場合などもありますので、やはり都道府県ごとに出…
こちらを参照してみてください。しかし、この手の質問に対する回答など、多くの場合は自己正当化の物語りに過ぎないのではないでしょうか。皆さん、受験や就職活動で「志望動機」を訊かれることが多いと思いますが、それに対して用意した回答は、ほとんど建…
そのすべてですね。結局、環境史のなかでも、何を明らかにしたいのかという具体的な対象、問題設定によって、用いる方法やその重要性は変わってきます。心性や感性を探る分野なら文献や絵画が重要でしょうが、例えばそのなかでもある地域の樹木観について探…
「ほとんど意識していない」という点が重要なのです。すなわち、人間の感性や感覚、思考様式などは、多く自然環境や社会環境によって無意識に構築されているのです。例えば、山や海のある変化の豊かな自然環境に暮らしていれば、それだけ多くの植物や動物、…
現在書かれ読まれている小説も含めて、完全なフィクションであっても、その時代に書かれたものは、必ずその時代の制約を受けます。未来を描いたSF小説をみると、19世紀の頃から、大砲の玉、ロケット型、飛行機型、船舶型、より自由な形状へとさまざまに変…
非常にたくさんありますね。ぼくが一時期集中して研究していたのは、樹木が人間に伐られることに抵抗するという伐採抵抗伝承、樹木の精霊と人間とが結婚するという樹霊婚姻譚などですね。ほとんど追跡している学者がいないので、最近ではぼくの学説が海外で…
重要なことですね。一般には、過去の重要な出来事、共同体の記憶は、長い年月をかけてずっと受け継がれてゆくと思われがちですが、実は多くが忘却されてしまうか、伝承されても時代時代の感覚に従って改変されてゆくのが現実です。自分の記憶力について振り…