日本史概説 I(11春)
これについては、説得的な回答を見出せないですね。単なる主観的な美しさが要因なのかも知れません。皆さんも想像してみて下さい。
まったく出土していないわけではありませんが、西日本のように、青銅器が共同体全体を象徴するような状態にはなっていなかったようです。しかし関東では、例えば鉄器流通が浸透していた地域では前期古墳がみられず、それまでまったく開発されていなかった原…
象徴的なものへ展開していったとしても、やはり武器は武器ですので、それ自体が何か社会の変化を反映しているわけではありません。上の回答でも書いたように、武器の本質は辟邪性です。それゆえに神聖視され、共同体のシンボルとなっているので、例えば銅矛…
弥生時代の祭祀の具体相については、実はよく分かっていません。考えられるのは、青銅器が神を祀るための道具として必要だったか、もしくは神を勧請する憑代として使用されたということです。武器は、敵を倒し自分を守る道具であるがゆえに、辟邪の象徴とさ…
青銅は純銅よりも硬質ですが、やはりしっかりと製鉄された鉄器の方が丈夫です。講義でもお話ししたように、日本列島には青銅器・鉄器がほぼ同時に将来されますので、美しく耀く前者が祭器、丈夫な後者が実用器へ、自然と区別され使用されたのでしょう。
確かに、文献で判明する古代以降、日本は銅の産出量を伸ばしてゆきます。しかしこの時点においては、お手本として入ってきた中国・朝鮮半島の青銅器に倣ったものと考えられます。中国の青銅器も、発掘されているものはまさに「ブロンズ」色ですが、というこ…
日本列島に限らず、いわゆる国家以前の共同体社会は、何らかの形で尊敬本意社会の特色は持っていたと思います。自らの衣食住の存在になる動植物にも、自然現象にも、もちろん共同体を構成する人々にも尊敬をもって接する。それが人間どうしの不要な競争や対…
東アジアとの繋がりを強調しすぎると、「果たして日本列島に独自性はあったのか?」と思われるかも知れませんが、アジアと共通する要素を持つ文化にしても、それ全体としてはやはり日本列島固有のものなのです。どこからか渡来してきた文化も、列島の自然環…
縄文文化の、少なくとも東半分は北方からの要素を色濃く伝えており、北海道に展開するうえで社会的にも大きな障害がなかったのだと考えられます。それに対して弥生文化は、中国・朝鮮半島に由来する極めて政治的(ある意味では閉鎖的・競合的)性質を持つも…
この問題については、私は回答をする能力がありません。しかし例えば国語学者の大野晋は、現在の日本語が大きな枠組みではタミル語系に属し、その基底には、それ以前に使用されていたポリネシア語系の言語が存在するとの学説を立てています。日本列島の文化…
ないとはいえないですね。思考形態も生活文化も異なるわけですから、生活領域が近接していれば様々な軋轢が生じることもあったでしょう。問題は、それがすべてではなく、文化の進んだ弥生人が文化の遅れた縄文人を駆逐し、列島を占拠したわけではないと判明…
「自然との共生」を語ること自体が近代的発想ですが、自然愛好のような視線は『万葉集』などの段階からみることができます。しかしそうした歌を詠みつつ、一方では大規模伐採を行い、山を削り、川を付け替えるような開発を実行していたのも確かです。現代日…
伐採は磨製石斧によるものなので、現在の我々が行うよりかなり苦労が多かったと考えられます。ですから、低湿地林の伐採も、それなりに時間をかけて達成されていったとみるべきでしょうね。人口史の権威である経済学部の鬼頭先生によると、日本列島の人口は…
あれは夫婦で国占めの競争をしているという設定なので、夫は讃容郡を妻に占められてしまったため、新たに自分の領地を占めるべく別の土地へ移動しているのです。
授業でも触れましたが、琴は神憑りを呼ぶ楽器であったと考えられます。考古遺物としては、人物埴輪のなかに琴を弾く姿のものが存在したり、あるいは他界(死後の世界)を描いたらしい古墳壁画のなかに、琴らしきものが確認できたりします。『日本書紀』神功…
太占は鹿の肩胛骨を使った熱卜ですね。弥生時代の鹿に対する信仰に基づき、恐らくは稲作の豊作を願う卜占に鹿を使用したものと思われます。しかしさらに広い視野で考えてみますと、熱卜の始まった中国では狩猟採集社会には鹿を、牧畜開始以降は羊、牛、豕を…
いわゆる「グロテスク」表象ですね。確かに明確な形では出てこず、出てきても中国古典の引用(『山海経』)の場合が多いと思います。日本列島の文化は、どちらかというと動物になりきる、植物になりきるという変身の方が一般的でしょう。これは、中国をはじ…
狩猟採集社会では、自然の各空間を代表するような生き物を、「主」と崇める信仰が存在したようです。熊は山の主、猪は野の主、蛇は池沼の主、シャチは海の主…といった形です。大空を待って他の鳥を追い、地上の小動物を捉えるワシやタカは、空の主とみなされ…
ドメスティケーションの問題からすると、人間は犬を家畜化することで、野生の感受性(危険を察知する能力、夜間の警戒性など)を失ったと考えられています。つまり、それらを代行するのが犬という存在であるわけですね。しかし、縄文や弥生の頃の日本には、…
『古事記』では、ウサギは「兎神」と語られ、神的な存在です。さらに、ワニのために毛皮を剥がれて重傷を負った彼/彼女を、オホクニヌシが救済して神性を取り戻させるので、やはり「再生する存在」となっています。ちなみにシロウサギは「素兎」と書くので…
やはり蛇は、世界的に信仰される生き物ですね。あとはアジアでは、熊・虎・狼などが共通の存在として崇められています。これらは民族の始祖=トーテムとして崇拝されることの多い存在で、やはり人間にとって畏怖すべき力を備えているからなのでしょうね。
概ねそのとおりですね。縄文人が鹿や鳥を単なる「肉」として捉えていたかどうかは分かりませんが、熊や猪ほどには注目をしていなかったものと思います。大陸や半島からもたらされた習俗がきっかけとなり、また自らも稲作農耕に従事してゆくなかで、弥生時代…
神を使役するという発想や技術は、日本の神祇信仰のなかにもみられます。祭祀氏族であった忌部氏の担う大殿祭においては、天皇の日常的に起居する宮殿=大殿を保護する屋船命が祀られますが、忌部氏はこれを「汝」と呼び誉めそやしながら使役するのです。こ…
納西語はチベット・ビルマ語族イ語グループに属しますが、納西語に精通していなくとも、辞典等を用いてトンパ文字を理解することはできます。トンパ文字には殷代の甲骨文字と似たところもあり、その古さを強調する見解もありますが、例えば「帝」を表す文字…
赤色顔料は、酸化鉄系のベンガラ(いわゆる朱。弁柄。インドのベンガル地方の原産なのでこう呼称されるという)、硫化水銀系の辰砂(いわゆる丹。中国の辰州原産)に二分されますが、いずれも、石器時代より破邪の顔料として用いられ、墳墓などには濃厚な施…
日本列島の古い時代においては、昆虫を、死と再生のモチーフとした事例はあまり見受けられません。弥生の銅鐸絵画には、アメンボやカマキリが見受けられますが、稲作との関連(すなわち水田に生息する生物)で注目されたものでしょう。飛鳥〜奈良時代になる…
世界の動物モチーフを総覧したわけではないので一概にはいえませんが、イノシシと蛇が融合されて土器のレリーフになっている、通称「イノヘビ」は世界でも珍しい事例でしょう。イノシシは多産な動物ですから、再生の象徴である蛇と結びつくことも理解できま…
どうなんでしょうね。甲羅を持つという亀の形態的特徴は、アジアでは古くから何らかの信仰を集めていたようです。中国では紀元前7000年頃から、亀甲をつづり合わせたポシェットのような道具が墳墓などからみつかり、前4500年頃には、玉で作られた卜占の道具…
難しいですね。とにかく解釈に用いるための材料が少ないので、妥当な見解を導き出すのは相当に困難です。学界においても「こうした可能性がある」程度で、定まった解釈はないでしょう。個人的には、後に勾玉となってゆく胎児のような形は縄文の遺物にもみら…
ハイヌヴェレ神話自体、文化人類学者によって採取されたのは近代ですから、どこまで遡りうるのかは分かりません。ただし、東〜東南アジアの古代に、栽培作物の起源を「殺された女神」の形式で語ろうとする文化が広く存在したことは確かです。その形式自体は…