2018-01-01から1年間の記事一覧
実は、イザナキ・イザナミに類する始原の兄妹・夫婦神が、現在の民族の祖先を産むというタイプの民族起源神話は、東アジアの少数民族の間に広く残っています。そこではヒルコを想像させる肉塊から、人間と羊や豚が生まれたり、あるいは隣接する民族が複数生…
授業でも少しお話ししましたが、古代から現代に至る日本列島の歴史のなかで、近現代が最も天皇制が安定している時代です。それ以前は、いつ天皇制が消滅してもおかしくない情況にありました。近世の江戸幕府などは、よく「宗教的権威は天皇、世俗的権力は将…
一番下の参考文献をみていただければ分かりますが、確かに士族反乱のような大規模な暴動はなかったものの、いつそれが起きてもおかしくない状態は持続していました。また見方を変えれば、例えば島崎藤村の『夜明け前』の主人公など、平田国学に傾倒して明治…
古代の、国家主導の神祇制度においては、最高の位置に付いていたのは皇祖神のアマテラスでした。しかし、『古事記』や『日本書紀』のなかではそれが必ずしも一貫しておらず、また天皇中心の構成にもなっていません。どうやらアマテラス以前は、造化三神のう…
のちの中世史のトピックでは、アイヌを扱うつもりでいます。その際に具体的に示してゆきますが、皆さんが学んできた高校までの日本史では、アイヌをどのように学んでいたでしょうか。恐らくは中世〜近世で琉球とともに、列島の北端と南端(西端)の歴史とい…
この授業を半年受けて、そのことに自分なりの結論を出してください。学期末の小テストの問題に関わりますので、ここでは保留にしておきます。
「戦前回帰」といわれる問題ですが、ぼく自身は、単純にこの一言で片付けられる問題ではないと考えています。授業でも少しお話ししましたが、当時と現在とでは、日本を取り巻く世界情勢も、国内の事情も異なります。しかし、教育において国権が強化されてい…
徳川政権も、天皇から征夷大将軍を拝命している意味では、王権に依存した機関です。そもそも幕府とは、中国南北朝時代の府官制に起源する機関で、皇帝権力を分有する将軍が、内乱地域を安定させるため、一定期間臨時政府を設置することを認められたものです…
皇国史観のところで触れたように、ナショナル・ヒストリーが基本的には怖ろしいものである、国家の目的に国民を動員してゆくために、その自由はもちろん、基本的人権さえ侵害する危険性を持つことを、まずは充分に認識すべきです。国家が正当なものとして公…
授業でもお話ししましたように、この全世界で1秒間に起きる出来事のすべてを記録することすらできない以上、「完全な歴史」はありえません。歴史叙述は、永遠に完成することはないのです。いいかえれば、偏重や欠落を、集合的主観の創り出す多様性で補完し…
マジョリティの思考とは何でしょうか。端的に「大多数の」と考えた場合、それは一般庶民の歴史観ということになり、現在主義的な教訓や、多くは現状を正当化するために物語的な歴史が再生産される状態でしょう。実証主義的な〈事実〉は、それほど重要視され…
すでに授業でお話ししましたが、マルクス主義歴史学なども現在主義です。ランケの実証主義は、それぞれの時代に優劣はなく、古代には古代の、現代には現代の固有の価値があると考えますが、現在主義では文字どおり現在が最も重要で、先行する各時代は現在を…
一般的には、自国史とそれ以外の国々の歴史=世界史、ということになるのでしょう。中国では、広大な地域において種々の事情の相違がありますので、やはりナショナル・スタンダードが完徹されているわけではありません。1999年から現在まで続く教育改革のな…
ありません。基本的に平常点、その平常点を少し拡大した小テストのみです。
史跡や博物館展示に関する概要、基本的データは、詳しく調べていればそれなりに評価しますが、いちばん大きなポイントは、その史跡や展示の重要性、あるいは問題点などをどう見出せるか、そうした受講者個人の見解です。オリジナリティを重視します。
よくいわれるのは、現在の日本のメディアは発表報道が主流で、調査報道がほとんどできないということです。国の公式発表、企業の記者会見などを真に受け、受動的に報道するのみ。インターネットのニュースなどは、とくにその傾向が顕著です。しかし、民主社…
両方とも、その定義が曖昧なところが問題なのです。つまり、いかようにも解釈をすることができ、適用範囲を拡大することができるということです。現政権は些細なことまで「閣議決定」することによって、専門研究者の見識や一般社会の常識とはかけ離れた統一…
授業中にも話をしましたが、現時点での教育制度の問題は、いわゆる「右」「左」の如何を問わず、時の政府の意図を直接教科書へ反映できるようになっていることです。つまり、「左」の政権が誕生すれば、教科書の記述をその意図に基づいて改変できるわけです…
●自然環境との関係 →縄文〜平安期において、古墳時代を除き概ね温暖な時代。次第に王権・国家から一般階層へ、開発が大きく展開・寒冷化の時代 →苛酷な情況のなかで権力が集中、王権・国家の成立の契機へ(戦争、内乱)・温暖化の時代 →社会の下層に開発の気…
以前に特講で半年、この話をしたことがあります。『続日本紀』によると、天平7年の流行の原因は明確ではありませんが、被害が北九州の大宰府管内から始まっていること、遣唐使船帰朝後数ヶ月で大規模化していることなどからすると、やはり海外から持ち込ま…
福原栄太郎氏の研究によると、天平9年の大流行では、従五位下以上の京官の約4割弱が半年のうちに死亡しており、12月末の任官では16寮のうち9寮の長官が新任となっています。また、細井浩志氏の指摘によると、『続日本紀』中の天平10年〜天平勝宝8歳の期…
以前授業でお話ししたと思いますが、儒教では、礼に込められた社会秩序を一般社会に定着させてゆくためには、音曲によって人々の心を和す楽が必要だとする考え方がありました。これを礼楽思想といいます。日本では、大宝律令の制定によって、礼を構築するた…
前回の質問でもある程度は答えていますが、やや誤解があるようです。阿倍内親王=孝謙=称徳は、日本最初の女性天皇ではありません。大王としてはすでに推古、皇極=斉明がいましたし、天皇としても、持統、元明、元正が即位しています。最初であるのは「皇…
奈良時代の律令官制においては、後宮十二司という女性官僚の機構が整備されています。具体的には、後宮における天皇の日常生活に供奉する内侍司、神璽・関契など天皇御用の雑物を管理する蔵司、書籍・紙・筆・墨・楽器を扱う書司、医薬に関して供奉する薬司…
以前にも、縄文時代あたりでお話ししたと思いますが、満ち欠けを繰り返す月は死と再生、不老不死の象徴です。ゆえに、中国ではオタマジャクシから変態するヒキガエル、冬になっても枯れない竹などが、同じ不老不死、死と再生のカテゴリーに入れられ、月のな…
中世以降に比べて史料が少ないことは、やはり否定できません。ただし、それでも民衆生活の判明する史料はあるし、いろいろなことが分かってはいます。例えば、これは「庶民」とは呼べないかもしれませんが、東大寺の造営や種々の仏教事業に当たった造東大寺…
基本的に、平城京遺構の柱跡や出土瓦のほか、平安京の大極殿や朱雀門に関する絵巻等々の史資料や、法隆寺、薬師寺、東大寺、海龍王寺五重小塔などの前後の時代の建築、四天王寺、薬師寺、唐招提寺、難波宮などの出土品を参考に復元しています。よって、充分…